アレクサンダーテクニークを説明する上で、「なぜその理論に至ったのか?」を
理解するには、FMアレクサンダーがこのテクニークを完成させるまでの
発見と失敗の繰り返しの歴史を見直すことが近道の一つだと思う。
なので前回の「その1」から1年以上も経過してしまったが、僕もアレクサンダーの
根気を見習って続けていこうと思います。
そして、もう一つ影響されたことがありまして、現在、喉が緊張して声がかすれるという
ある生徒さんのレッスンをしているのだが、このアレクサンダーの状況に近い。
そこで、もう一度初心に帰って、この本を読み返そうと思ったからです。
ちなみに、その生徒さんは、某大学の教授をされていて、やはり人前で話をする
仕事なのです。
というわけで、今回は以前書いた
フレデリック・マサイアス・アレクサンダー その1
の続きです。
前回のあらすじ
俳優、朗唱者として順調な道を歩んでいたアレクサンダーは、声がかすれるようになり、
発声に大きな問題を抱えた。医者にも頼ることができなかったアレクサンダーは、その問題を自分んで治すと決意し、まず自分を観察し始める。
発声の際に①首を固め押し下げる(短くする)②喉頭(ノド)を過剰に押し下げる、という癖を発見。③さらに癖である①②がプレッシャーやストレスがかかる場面で顕著に現れること。そして、僅かだが①②の癖は日常生活でも現れていることに気づく。そこで首を長くしておけば声が改善することを発見した。さらに…
身体の使い方が、自分(の身体)の機能の仕方に実際に影響することが分かった
アレクサンダーはさらなる発見を求め、自分の観察を続けた。
首を押し下げる癖に対して、頭が『上』に行くことに加え、
『前』に出ることもしながら、喉頭を押し下げない頭−首の使い方を追求していると
そこで喉頭を押し下げているときは、胸を持ち上げ、背中を狭くし、
本来の身長を短くする傾向にあることを発見した。
アレクサンダーの悪い癖「胸を持ち上げ、背中を狭くし、本来の身長を短くする傾向にある」とあるが、
具体的な姿勢などの描写がないので、イメージしやすいように僕なりの考察です。
A B C D
おそらく、アレクサンダーはDのような姿勢に近かったのではないかと思う。
(B-C-Dのどれでも可能性はある。)
図の姿勢では身長は左端が一番高く、右に行くにつれて低くなっていく。
Dに緊張の方向を赤い矢印で表してみました。
赤い矢印①は首を押し下げるようにする緊張の方向。
赤い矢印②は胸を持ち上げるようにする緊張の方向。
アレクサンダーは、声の機能は頭と首によって影響されるばかりでなく、
体全体の緊張パターンによって影響されることを理解した。
この観察は大きな分岐点となりました。
そして、次のステップを、頭−首を改善しながら、本来の身長を縮めないように
防ぐこととした。
実験が明らかにしたのは、声の機能がもっとも良くなるのは、
身長が長くなるときということだった。
そして、これが達成されるのは、首−胴体の関係で、アレクサンダーの言う『前へ上へ』
行く場合にのみ起こる。
ここでの彼の発見は、
頭−首−胴体のダイナミックな関係が
人間の動きを組織する第一の要素である。
アレクサンダーはこれを『プライマリーコントロール』(初原的調整作用)と名付けた。
まだまだ続くよ〜…
今回、僕が伝えたいことは
1、身体全体が繋がり、相互に作用している
2、プライマリーコントロール(初原的調整作用)
1、日本には東洋医学が浸透しているおかげで、身体は全部が繋がっているという認識が
一般的だ。西洋医学のような、体を部分だけで見るという考え方とは違う認識が
浸透しているのはとても良いことだと思う。
しか〜し!!頭では半分常識のような感覚で理解しているものの、実際身体の繋がりを
感じながら生活している人は非常に非常にひじょ〜に少ないと思う。
さらに、心身一元論なる心−体の繋がりなんてもっと離れた存在になってる気がする。
そのため、体と心の”声”を聞き逃してしまって、痛みや病気が表面化してやっと身体に
意識を向ける。本当の早期発見とは、病気や痛みが出る前に身体から出ている
色々なサインを見逃さないことだと、僕は思っている。
さらに、身体の不調や痛みすら我慢したり、薬でごまかしてしまうと手遅れになり、
肉体的・精神的に重い症状に悩まされてしまったり、最悪の場合、自殺に
追い込まれるといったケースにまで発展してしまうのではないだろうか。
そーゆーストレスフルな社会が悪いと、もちろん思うことも多いが、
もっとこれらの『繋がり』を頭で理解するのではなく、
心と身体で感じて欲しいものだ。
おっと、ちょっと話しが脱線してしまった…
とにかく、身体は全てが繋がっていて、影響しあっている。
身体の感覚が高い人なら次のことは気づきやすいのだが、例えば、片方のつま先を
ぐっと曲げて大地を掴むようにすると、その緊張は首まで伝わってくる。
身体感覚を鍛えれば(or取り戻せば。昔は持っていた感覚です)感じれるので、
試しながら自分を観察してみて欲しい。
2、プラマリーコントロール(初原的調整作用)
なんだか小難しい日本語訳になっていて感覚派の僕にはイマイチピンと来ないのだが、
要は
体全体のコーディネーション(協調運動)を
高めるために最重要!!
僕が、まず最初にアレクサンダーの学校で覚えさせられた英語のフレーズがこちら
「Let neck be free. 首を自由に、
Head forward and up. 頭は前に上に、
Lengthen and widen your back. 背中を長く広く」
毎日毎日呪文のようにこのフレーズを唱えていました。
Let neck be free「首を自由に」
ここで言う自由とは首全体を柔らかくというイメージだ。
だが、結構柔らかくってイメージしにくいと思いますが、
全体がほんのり膨張するような感覚がいいのかと思います。
もしくは、柔らかいものをイメージすると結構変化がでます。スポンジとか。
そして、頭がただ背骨の上に軽くポンッと乗っているような感じ。
頭は首で支えられているが、バランスが良ければ余計な力を入れて
首を固める必要はない。
柔らかくって、とても抽象的で言葉では伝えにくいですね。
ハンズオン(手で触れる)すれば、それをもっと明確に伝えられるんですが…
Head forward and up 「頭は前に上に」
下の図、赤い矢印の先にある穴(耳の穴)の下が、頭(頭蓋骨)と首(頚椎)の境目に
なります。この境目にほんの少し隙間ができるように頭が前に上に浮いてくる
ような感じです。
さらに上手く「頭が前に上に」行くことで、頭と背骨のバランスが良くなり、
余計な緊張を解放しやすくなる。
【注意】
よく間違うのが、「頭が上に」と意識すると、無意識にあごが上がってしまう。
この無意識のクセを持っている人は非常に多い。
【補足】
先日、生徒さんに「前へ上への『前』ってこっち?」という質問がありました。
この方向は、僕もアレクサンダーの学校に行っている際に校長には何度か質問しました。
校長のGioraの答えは「これが前へ上へだか!」とハンズオンし、下の図のように導いて
いてくれたことを思い出します。
Lengthen and widen your back「背中が長く広く」
「頭が前へ上へ」行くと、(余計な力が入っていなければ)下の図のように
背骨は自然と伸びる。
背骨は伸びやかで、クネクネと蛇のように動ける余裕があるほうがいいのだ!
こちらは、背中の筋肉の図です。
〈表層の背筋群〉 〈深層の背筋群〉
左は表層の背筋群。右が深層の背筋群。
比べて欲しいのは筋肉の繊維の流れ。
左は、中心(背骨)から外へ。肩をサポートしています。
右は、腰から背中を伝って後頭部まで縦に行っています。
つまり、
左は背中が「広く」なるための筋群
右は背中が「長く」なるための筋肉です。
背筋群は、非常に多くの筋肉が上半身を支えています。
前面の腹筋群に比べて、大きくしっかりしています。
なので、もっと背中を意識し効率良くってあげましょう!
背中側は、普段意識しにくい場所。筋肉の図でイメージを明確にして
欲しいと思います。
身体のどこか一部を意識すると、そこばかりに集中してしまうことがあります。
それが時に、体全体のコーディネーションを阻害する場合もあります。
僕の経験上からも、プライマリーコントロールとともに体を意識した方が
良い変化が生まれやすいのです。
それを考えると、アレクサンダースクールの校長は、なぜあの呪文を繰り返し
唱えるように言わせていたのか、その重要さが今になってさらに良くわかります。
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